2011 年にフジテレビ系ノイタミナ枠のアニメとして放送された「あの花」こと「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」は、その後劇場版や実写版も制作され、作品の舞台となった埼玉県秩父市には放送から数年を経た今も多くのファンが…というお決まりの解説は、おそらくこの記事をご覧の方には不要かと思います。
「あの花」制作スタッフが再集結し、2015 年 9 月に公開された完全新作の劇場版アニメ「ここさけ」こと「心が叫びたがってるんだ。」には、秩父市に隣接する横瀬町 (よこぜまち) も登場し、アニメの舞台として、さらなるファンの集う場所となった秩父。
この記事では、その秩父と都内を結び、アニメ作中にも登場する西武線を利用して舞台を巡る際の、お得な切符と使い方について紹介してみたいと思います。
なお以下で紹介する切符で特急レッド アロー号 (全席指定) を利用の際は別途、特急券の購入が必要です (通常の乗車券同様に組み合わせて利用できます)。また、いずれの切符も使用後は (乗り降りフリー乗車券は発駅の改札機または乗り越し駅の精算機で) 回収されます。記念に保存したい方は、旅行終了駅で機械に投入せず窓口にて申し出ると、写真のような使用済を示す「無効」印を押された上で持ち帰れます。
秩父漫遊きっぷ
西武線の各駅から、フリー区間を含む西武秩父駅までの往復乗車券に、3 つの特典のうちいずれか 1 点を選べる「漫遊まる得クーポン」がセットされた企画券です。
販売方法および期間は各駅窓口 (小竹向原・高麗 (こま)~西武秩父駅間・拝島 (はいじま)・多摩川線各駅を除く) にて通年、利用開始の 1 ヶ月前から当日までの発売。有効期限は利用開始日より 2 日間です。購入には現金のほか、PASMO/Suica (モバイル含む) およびこれらと全国相互利用できる IC カードのチャージ (残高) も利用できます。
特典は、クーポンとの引き替えで以下より選びます。
- レンタカー (トヨタ レンタリース埼玉 秩父駅前店) の割引
- 秩父エリアが 2 日間乗り放題の「漫遊きっぷフリー パス」などの西武観光バス乗車券
- 西武秩父駅構内 (改札外) の土産物・飲食店が連なる「仲見世通り」にて、そのまま大人 640 円・小人 320 円分の金券として利用
レンタカーやバス利用の詳細、西武線各駅からの発売額については西武鉄道の次のページを参照してください。
発売額だけ見ると、西武秩父駅までの単純往復運賃より割高ですが、たとえば池袋発で付属のクーポンを上記の仲見世通りで利用すると
発売額 (大人 1,900 円) < 通常往復運賃 (1,560 円) + 640 円分の金券
となり、実質的に電車代と土産 (食事) 代の合計から 300 円割引になります。この例で各駅からの発売額を比較すると、下記の通り距離の長いほど合計額からの割引が大きいことが分かります (表の通常往復運賃は「きっぷ」の場合 (非 IC) で計算)。
発駅 | 発売額 | 通常往復 | 合計割引額 |
---|---|---|---|
西武新宿 高田馬場 池袋 | 1,900 | 1,560 | 300 |
石神井公園 | 1,720 | 1,340 | 260 |
秋津 | 1,540 | 1,120 | 220 |
所沢 | 1,500 | 1,060 | 200 |
飯能 東飯能 | 1,300 | 820 | 160 |
しかし、都内の起点駅である池袋・西武新宿 (高田馬場) から乗車し西武秩父まで往復するだけなら、「株優」を 500 円台で入手できれば、漫遊きっぷより純粋な運賃だけで安上がりになります。これについては以下の「株主優待券」の項で説明します。
アニメ舞台を巡る上での秩父漫遊きっぷの有用性としては、まずクーポンのバス利用が考えられます。ここさけ・あの花とも全部の舞台を回ろうとすると結構歩きますので、秩父に 1 泊した場合でも 2 日間にわたって使えるフリー パスでバスを活用すれば移動を楽にできます。特に「ここさけ」の舞台については、なんと西武バス自らが最寄りのバス停マップを公開しています (PDF) ので参考にしてみてはいかがでしょうか。ただし都内などに比べると、どうしても秩父エリアのバスは運行本数が充実しているとは言いがたいため、その点は留意してください。
歩いて回るからバスは乗らない、という場合でも、せっかく来たならお土産の一つくらい買いませんか。西武秩父駅に隣接する仲見世通りには秩父の名産品はもちろん、あの花・ここさけアイテムを置いているお店も複数ありますので、それらで上記の通りクーポンを金券として利用できます。なお仲見世通りは 19:00~19:30 (店舗により異なる) に閉店しますので、遅くまで写真撮影に夢中になり、買い物や食事の機会を逃しクーポンを無駄にしないよう注意しましょう。
乗車券本体について言うと「ここさけ」では西武秩父周辺に加え隣駅の横瀬も登場しますが、漫遊きっぷなら高麗 (こま) 駅までが乗り降り自由なので、切符の有効期間 2 日間に渡り両駅を自由に行き来できるのもメリットです。
東急西武線まるごときっぷ
東急線の各駅 (渋谷・世田谷線とこどもの国線各駅を除く) より、東京メトロ副都心線の渋谷~小竹向原間および西武線全線が一日、乗り放題となる乗車券です (東京メトロ・西武線内では発売しません)。
販売方法および期間は各駅の自動券売機により通年、利用当日のみの発売。購入には現金のほか、PASMO/Suica (モバイルは不可) およびこれらと全国相互利用できる IC カードのチャージ (残高) も利用できます。
以下の各駅からの発売額で、池袋線・新宿線・拝島線など西武全線が一日乗り降り自由となり、もちろん長く乗れば乗るほど元が取れますから、東急沿線および横浜など神奈川から日帰りで秩父を訪れるのにはうってつけです。
時間の余裕があるなら、副都心線では渋谷でアイドルマスター シンデレラ ガールズ他多数・雑司ヶ谷で冴えない彼女の育て方・池袋でデュラララ! など、西武池袋線では練馬や大泉学園などで四月は君の嘘・飯能でヤマノススメなど、途中駅でも自由に下車して、目移りするほど様々なアニメの舞台を巡れそうです。秩父に着くまでに時間がなくならないよう、道草注意の切符です。
西武鉄道株主優待乗車券
西武鉄道が一定数の自社株を保有する株主に配布する、いわゆる株優と呼ばれる乗車券です。効力としては 1 回に限り西武線の任意の区間を利用できるもので、つまり長距離の乗車であればあるほど得になる切符といえます。
都内などの金券ショップには電鉄各社の同様な株優が出回っており、西武の場合は起点駅の池袋・西武新宿 (高田馬場) から終点の西武秩父間を利用する際に、これを買うと正規運賃より割安に乗車できます。
おおむね 500 円台後半から 600 円台前半で販売されており、複数の金券ショップが軒を連ねる新宿西口から大ガードまでの道沿いなどは、各店が販売価格を競っています。しかし利便性の高い池袋や新宿などの西武線起点駅周辺は平均価格も高めのため、都内なら同様に競合の多い御徒町エリアなどに行く機会があれば、そちらの方が安い可能性があります。
いずれのショップで買う場合でも、首都圏の電鉄各社の株優は西武含めほとんどが有効期限を毎年 5・11 月末に設定しているため、購入時は注意してください。逆に言えば金券ショップ各店は期日に近づくとこれらを処分価格とするため、500 円台前半などで 2 枚入手できれば、都内と秩父の単純往復は漫遊きっぷよりダイレクトに割安になります。
難点としては、ほとんどの金券ショップが朝 10 時オープンなので、乗車当日の入手では利用しづらいこと。何よりも正規の商品ではないので、価格が一定でなく売り切れもあり、臨機応変な手配をできないのが弱点です。金券としての販売なので、もちろん購入時は基本的にカード (や Suica など電子マネー) も利用できません。
また、ショップの価格にもよりますが中央線などからバスでの連絡・武蔵野線の新秋津や八高線の東飯能乗り換えなど、あるいは沿線在住で西武線の途中駅から秩父に向かうなら、株優の価格メリットはほとんどありません。池袋・西武新宿・高田馬場以外からの乗車または横瀬などフリー区間の乗り降り・バス利用などをされたい方は、漫遊きっぷを買いクーポンを活用した方がお得だと思います。
株優は都内からの乗車で、事前に手配する余裕のある「分かっている」首都圏在住者向けの手段といえるでしょう。
その他
このほか、西武鉄道では秩父鉄道の長瀞・三峰口方面の乗車券がセットの「秩父フリーきっぷ」も発売していますが、ここさけ・あの花の舞台巡り向けではないため、本記事での説明は割愛します (漫遊きっぷと間違えて購入しないよう注意!)。
西武線は全線で PASMO/Suica を利用できるので、もちろん IC カードで乗車してもかまいませんが、よりリーズナブルにアニメの舞台を巡るために是非お得な切符の利用を検討してみてはいかがでしょうか。
なお「心が叫びたがってるんだ。」の舞台は以下の通り本ブログでも紹介しておりますので、併せて参考にしていただければ幸いです。
この記事の内容は 2015 年 11 月現在のものです。記載されている価格や特典などは変更となる場合がありますので、最新の情報は必ず各社の公式サイトなどを確認の上ご利用ください。